ある時、お母さん方のおばあちゃんの家に連れていかれた。
その時、おばあちゃんの目の前でいきなりお母さんが私に嫌味を言い、喧嘩をふっかけてきた。明らかになにもないのに絡まれた、という感じだったが、なんとなく子供心に
「いつものように私に言い返して欲しいんだろうな」
と思い、私は言い返して悪態をついた。
するとお母さんはおばあちゃんに
「ね? ひどいでしょう?」
と言い、おばあちゃんも眉をひそめ、
「本当にひどいねぇ、可哀想に」
とお母さんに同情していた。私はおばあちゃんの前で悪い子を演じていただけだった。
いや、お母さんに、悪い子を演じさせられていたのだった。それでも私はお母さんのことが嫌いになることもできず、毎日毎日苦しんでいた。
私にはその頃、ひとつの悩みがあった。それはお母さんがブラジャーを私に買ってくれないことだった。デリケートな事柄なだけに、私から切り出すのはとても恥ずかしく、ずっと黙っていたが、いつも同級生から
「かおるちゃんの胸は揺れてる~」
とか
「大きい~」
とからかわれていたので、毎日本当に恥ずかしかった。私よりもずっと胸が小さい同級生でも小学5~6年生からブラジャーを着けているのに、なぜ私は中学になってもノーブラで恥ずかしい思いをしなくてはいけないのか。
中学に入り、私は悩みに悩んで、お母さんにお願いすることにした。
「あのぅ…みんなブラジャーしてるから、私も欲しいんだけど…」
するとお母さんはあっさり
「じゃあ買いに行く?」
と連れていってくれた。その時既に私の胸はCカップかDカップあった。そりゃあ友達からからかわれるのも当たり前だ。そして、後からわかったことだが、お母さんは山口家に
「あの子は胸が大きくて、妙に色気がある」
と嫌悪感たっぷりに怒っていたそうだ。そんなこと、私の知ったことではない。なぜ怒るのかも意味がわからない。そういったところを守るのが母親の役目ではないのか。
ブラジャーを買ってくれない、というのは、毒母の典型的な特徴らしい。