二度目の腰椎手術・こりずに恋愛
腰痛持ちなのに助産師になった。なんてことだ。一番、腰に悪い職業をわざわざ選んでしまった。
けれどボディメカニクスをきちんと使えば腰を痛めないことがわかった。腰痛持ちの手術歴アリでも、分娩介助も中腰での仕事もできた。
すっかり腰のことを忘れていた私は、出勤途中、冬道を急ぎ、凍った地下鉄通路の階段から滑り落ちた。手にかすり傷を負い、足のしびれを感じたが動けたので出勤した。そうしたら勤務途中に突然歩けなくなった。即、入院。
椎間板ヘルニアが再発したのだ。前回手術と同じ部位だった。師長さんに怒られた。通勤途中だったから労災適用になったけれどご迷惑をおかけした。やはりこの腰問題はずっと抱えて行かなきゃならないのだと改めて思い知った。
幸い、この間に医療は進んでいて、治療が早いと回復も早い。
数か月で職場復帰、その後は分娩係も全く大丈夫だった。そして、この二度目の手術の時に毎日見舞いに来た男と、2年間の同棲生活を送った。
それまでKさん以外誰も好きになれず、不倫の恋をかりそめに気を紛らわせていた。
その同棲した男にKさんとの日々を重ねていた。違う男と夢の続きを見たかったのかも。その男・彼はマンガの「こち亀」こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治、週刊少年ジャンプ、集英社、1976年から2016年)の主人公とそっくり。それは彼自身が自負していた。
なのにスキーを滑る姿がカッコよく、趣味もあい、料理上手で話上手。あちこちドライブやバイクでツーリングして楽しかった。
けれど、東京本社から数年間の出向だった彼。
東京に帰ることが決まった時、親戚や友人から「現地妻」を連れて帰ってこないで、と言われた。
北海道は東京から見たら外国なのだ。私も外国には行けないから別れた。彼の実家は、教科書や小説『舞姫』(森鴎外、国民之友、1890年、紋雲閣1907年、その後、集英社等多数出版)にも出てくる由緒ある人物の直系だ。彼の顔はその教科書のその人物にやはり似ていた。