③人生の5大事実

サキ:先程の説明に出てきた「人生の5大事実」についてもう少し詳しく説明してくれますか。

コウキ:わかりました。まず「人生の5大事実」には「今・ここ・自分・1回性及び夢・志」があります。これらのことを明確に自覚して充実し幸せな人生を送ることが大切です。

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  • a) 今
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  • サキ:それではまず「今」については何がポイントですか。
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  • コウキ:人生は生きている時間であり、時間は人生そのものです。しかもその時間は日々確実に短くなりつつあります。それゆえ時間をどのように使うのかという質の問題は本当に命がけであり、非常に重要な問題です。
  • そして、永遠に続く今という時間がこの世に実際に存在する唯一のものであり、人生は今の連続であり、しかも「今」という瞬間は過ぎ去ってしまえば2度と戻ってきません。幸も不幸(注3)も含めて生きていることを今のみ感じ体験(注4)し、かつ因果律的に今のみが唯一の変化の可能性があり、新しい人生の創造の機会でもあります。
  • あるがままの現在の状態を前提として、「今を生きる」ということは人生において最も重要なことの1つです。
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  • サキ:そのとおりですね。
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  • コウキ:そして、自己を構成する「命や身体は現在の瞬間(今)に生きて」います。ところが「心」は必ずしも今に生きておらず、現在の不満の他に例えば、過去についての後悔や未来について不安(注5)を抱き、日常的に三世の苦痛に悩まされていることが少なくありません。
  • すなわち、これは因果律からすると非常に悪い思考法であり、心が現在になく過去や未来に行ってしまっており、このようなネガティブな思考はネガティブな感情や行動を誘導し、ネガティブ・スパイラル(注6)に陥り、生命エネルギー(注7)の不要な消耗を引き起こし、現在を台無しにしており、ひどい場合には心身の病などを引き起こします。
  • ところが過去は既に過ぎ去り歴史となっており、また未来はまだ来ておらず、どうにもなりません。この過去や未来についていろいろと頭の中で考えていることは、時間が無駄に消費されており、今に意識が向いておらず、集中していない状況です。しかもこの状態では心が本来持っているエネルギーを不要に消耗している状態であり、効率性や成果も上がりません。(注8)
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  • サキ:よくわかりました。つまり、「真に今に生きる」とは過去の後悔・不満や未来への不安などについての自動思考を停止し、現在の状況をあるがままに正しく見(「如実(にょじつ)知見(ちけん)」)て受け入れ、臨機応変な対処ができるように今していることに意識を集中し、ベストを尽くして自分の能力を最大限発揮して生き切るということですね。
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  • コウキ:そのとおりです。また、今していることに本当に集中している時には時間空間概念が消え、今の瞬間だけが存在し、過去や未来はありません。つまり、今だけ何かが現実に生じたり存在することが可能であるのに対して、頭の中であれこれ考えている(思考)時にのみ過去・現在・未来の観念が初めて生じます。

(注3)「人生の4大不幸」とは病気・貧しいこと・悩み・争い(含む、戦争)です。

(注4)「体験」とは外的で客観的な出来事や環境ではなく、その人が内的で主観的にどのように感じたかという意識体験です。これは、私たちはその出来事それ自体として体験するのではなく、(ネガティブやポジティブなど)何らかの解釈されたものとして事実を自ら意味づけ意識して体験しているからです。

(注5)恐怖は一般に過去の経験や読書・TV などの間接的経験から生じます。なお、恐怖に対する最良な対処法(「恐怖対処法」)はその恐怖に立ち向かうことです。

(注6)心の防衛機能の鍛錬法として感情を客観的に捉えるメタ認知の方法が有用です。

(注7)生命エネルギーは生命を維持するためのエネルギーで、肉体的・精神的エネルギーのことです。

(注8)心を今に集中することのメリットについての詳細な分析は、岩崎・四海、70-71 頁を参照されたい。

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