小説 『「本当の自分」殺人事件[注目連載ピックアップ]』 【第9回】 水木 三甫 硬直する体に構わず、若い桃のような頬に唇を当てる。首筋からさらに下へ、新鮮な匂い。しがみついていた力は抜け… 【前回の記事を読む】「好きな店でいいよ」と絶対に言わない。行く店は決めてくれるし、選ぶ店のセンスもいい。浮き彫りになる、夫の物足りなさ。高校を卒業すると、希代美はすぐに故郷を捨てた。都内の小さな問屋にどうにか事務職を得た。希代美は一生懸命働いた。会社とアパートを行き来するだけの生活。とにかくお金を貯めたかった。一人で生きていくためにはお金を貯めなければいけないという強迫観念があった。預金通帳の残…
小説 『眠れる森の復讐鬼』 【第40回】 春山 大樹 「彼女は本当に犯人だったのか?」監視カメラが暴いた新事実が明らかに。そして記憶を遡り、見えてきたものとは… 【前回の記事を読む】事件が終わり退院の日を迎えた。しかし、何か割り切れない違和感を感じて眩しい光から視線を避けた時に目に入ったのは……ナースステーションの前で両膝に手をつき、背を屈めて息を切らしている海智を見て一夏が慌ててやってきた。「何、忘れ物?」「経子さんは・・・・・・経子さんは犯人じゃない」「えっ、どういうこと?」「一緒に来てくれ」昼休みまでもう少し時間があるが、海智は無理に一夏を外の非常…