お盆の日に

蝉の声が「ぐわあー、ぐわあー」と響いて、耳鳴りがしそうな夏の午後に、私は身体を弾ませながら有頂天になって何かを話しています。

野球帽にTシャツ。真っ黒に日焼けした私は虫かごを肩から斜めに掛けて、薄茶のシャツ姿の男の人に手を引かれています。

男の人が指差す先を見て、私は顎を前に突き出して、強く訴えかけるように身体を左右に振り始めました。

その様子を見て、

「意気地なしだな」と笑った男の人の

くちびるの上には髭がありました。

このあと私は魔法のような出来事を見ました。

長い竿を持った男の人は、竿先を屋根の下にある蜘蛛の巣に絡ませ、隣の木で鳴いている蝉に、その竿先を近づけていきました。

一瞬にして竿先にくっついた蝉はぶるぐぐっと震えながら下りてきます。私はワクワクしながら蝉をわしづかみにして虫かごに入れました。

「すごいね」

驚く私をうれしそうに男の人は見ていました。

あの男の人は私のおじいさんだったのだろうか。

全てが遠い日の記憶です。