【前回の記事を読む】「すごい!もっと、潜って!」夏のプールで頑張るお父さんの姿

奥屋敷

蒸し暑い夜に横丁の連中と「もう1軒」ということになり、見知らぬ居酒屋に入りました。残念なことにカウンターがいっぱいで奥の座敷へ上がり込むことになりました。

「よっこらしょ」と座ろうとした瞬間、友人が「わあー!」と叫んだものですから、私も両手を上げて「エ~ッ!」と叫んでしまいました。

友人がちゃぶ台の下を覗き込むと「ニャーン」と鳴きながらネコが顔を出してきました。女将さんはクスクス笑いながら

「2階が暑いんで、冷房の効いている下に降りてくるんですよ。ゴメンなさい」

と謝っていました。驚いたせいか、みんな酔いも醒め、腹も減りました。

「もつ煮込み!」

「イカ刺し!」

「丸ぼし!」

「ヤッコ!」

いつの間にか、座敷のちゃぶ台は皿だらけに。

「女将さ~ん、お勘定お願いします」

「はーい、ちょうど1万円です」

「じゃあ、割り勘で」

「女将さん、細かくなりますけど、千円札で」

私たちが靴を履いてお店を出ようとした時でした。

「お客さ~ん。いちま~い、にま~い、さんま~い……」

「お客さ~ん。千円札が1枚、足りな~い」

怪談『横丁皿座敷』

お後がよろしいようで。
 

空席

座っている人で、なかなか降りない人はどんな人だろう。

本をじっくりと読んでいる人。

ゲームに熱中している人。

やはり、電車に乗っている時間が長いと、なにかやりたくなりますよね。座っている姿勢でも、すぐに降りる人降りない人が見分けられそうな気がします。

座席に深くドッシリと座っている人は、なかなか降りません。

逆に、浅く座って、目が左右によく動いている人は、すぐに降ります。目でプラットフォームの駅名を追いかけているからです。
確実に座ることが出来る方法は、例えばこんな場合でしょうか。

A男は始発のA駅から、いつも同じ電車の同じ場所に座って、会社へ向かいます。A男はB駅から乗ってくるB子のことが気になっていました。なぜなら、B子は必ずA男の前に立つからです。A男が降りるC駅に着きました。A男は名残惜しげに電車を降りました。満員電車の中、B子は、いつもの場所に座って、バッグから本を取り出しました。