「美代子は英国仕込みのセンスが身に付いているからパンツルックもいかにもキャリアウーマンってとこね。結衣ちゃんはパステル画の美術部員ということで淡い色合いがお似合いよ」
三人はそれぞれの衣装に一通り感想を述べ合っていた時に、店員さんがオーダーをとりに来た。三人は顔を見合わせて美代子が
「私はいつものアールグレイにする。花帆はブレンドコーヒーよね。結衣は?」
と視線を向けると結衣が
「私も美代子と同じ紅茶にする」
店員さんが
「分かりました」
と言い会釈をして下がった。
「時の経つのが早いよね。こうして会うのは二年振りよ。だんだんおばさんになっていくわ」
と美代子が言うと、花帆が
「すでに四十歳のおばさんよ」
と明るく屈託のない表情で笑った。
「美代子、結婚生活に慣れた? 違う環境に入っていったから心配していたのよ」
と花帆がどんな生活ぶりか知りたくて話を振ってきた。
「当初、想像していた生活とは少し違ったわね。主人との接点が少ないの。家には二十年来の家政婦さんがいて、主人の身の回りのこと、全てやってくれるから、私はただの同居人というところかな」
「身の回りのこと、と言うと?」
「入浴時の介助や毎朝食後の散歩、そして月一回のリハビリなど、だから私は主人の体にふれる機会も少ないの」
「家政婦さんの年齢は、若いの?」
「美月さんといって、私たちより少し上で四十五才ぐらいかな? 独り身だから若く見える」