エッセイ 人生論 日本 人生哲学 2023.05.27 「徳」は孤独なものではなくむしろ、人と人との関係の中で。 燕雀安知鴻鵠之志哉(えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや) ―史記・陳渉世家― 写真を拡大 燕や雀のように小さな鳥には、鴻や鵠のような大きな鳥の志は解らないということ。つまり、小人物には大人物の志はわからないという意味です。 『史記』に登場する秦国滅亡という大志を抱いた〈陳渉(陳勝)〉(後の楚の王)が言った有名なことばです。身分や家柄に囚われず、大きな志を以て実力で大位に伸し上がった陳渉の生き方は、時を超えて人々に大きな勇気を与えてくれます。胸を張って人生を生きて行きたいものです。
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『大阪弁で読む『変身』』 【第7回】 作者/フランツ・カフカ 翻訳者/西田 岳峰 【大阪弁・カフカ『変身』】虫になったワイを見たみんなの反応―自覚したで、冷静さを保っとんのは自分だけやと。「ほな、…」 グレゴールはこの大仕事でいっぱいいっぱいになっとって他のことを気にする暇がなかった、とそこへ聞こえたのは支配人が「ゲッ!」と叫ぶ声──さながら吹き抜ける風──そんで見えたのはドアのいっちゃん近くにおる支配人が、ポカンと開いた口に片手を押しつけて、目には見えんけど体全体を前から押す力に追いやられるみたいにジリジリ後ずさりする姿。母親は──支配人がおるっちゅうのに夕べっからほどいたまんまの髪がみごと…