俺はナビに住所を入れておいた霊園に向かった。墓の前で「沙優の居所を教えてくれ」と手を合わせた。
「本郷家のお知り合いの方ですかね」
俺に声をかけてきたのは、このお寺の住職だった。
「はい、沙優いえ、西ノ宮沙優さんを探しています」
「ほう、それは良かった、沙優さんなら、わしが預かっておる」
「ほんとうですか、二週間前に俺の前から居なくなってしまい、途方に暮れていました」
住職は「それはそれは」とニッコリ笑顔を見せた。
「さ、こちらへいらしてください」
俺は住職に案内されて、沙優のいる本堂へ向かった。沙優は本堂の掃除をしていた。
「沙優」
俺は沙優の姿を見つけると、駆け寄って抱きしめた。
「南條さん、どうしてここへ」
「沙優を迎えにきた」
「私を迎えにですか、華菜さんはご存知ですか」
「華菜は関係ない」
沙優はびっくりした様子で俺を見つめた。
「ご結婚おめでとうございます、私全然知らなくて……」
「華菜とは結婚はしない」
「えっ、どうしてですか」
俺は意を決して沙優に俺の気持ちを打ち明けた。
「沙優、俺はお前を愛している。華菜にはもう愛情を感じていない、だから別れを告げた」
「そんな、華菜さんがかわいそうです」
「愛情がないのに一緒にいる方が残酷だろ」
「それはそうですけど……」
沙優は少し考えていた。
「沙優、お前を愛している」
「駄目です、私はカモフラージュだから引き受けたんです。南條さんとは釣り合いが取れません」
「沙優、俺のこと大好きってメモ残してくれたよな」
沙優は頬を真っ赤に染めて恥ずかしがった。
「俺と結婚してくれ」
俺は沙優を抱き寄せた。見つめ合い吸い込まれるようにキスをした。しかし、結婚に対してイエスの答えは貰えなかった。
「沙優、一緒に帰ろう」
「私、どうしたらいいのか分かりません」
とにかく沙優を連れ帰るのが先決と思い、カモフラージュの関係を続ける約束をした。そして、沙優とマンションに向かった。