ヘルブラオのこまづくり
ツゲの大きな幹を半年ほど乾燥させる。
こまを作りやすいサイズに切断して32個のブロック材を用意する。
ブロック材を高速回転させながらこまのかたちに削る。
専用のカッターやペンサンダーなど鋼の工具を用いて細部のかたちを彫ほる。
サンドペーパーで表面をなめらかにする。
何度も磨き上げて研磨する。
16個のこまを黒く色付けする。
10日ほど乾かす。
仕事の日はもちろんのこと、休日もヘルブラオはこまづくりのことで頭がいっぱい。最新のデザインのこまを彫ってみたりこまの見本市へ足を運んでみたり……
毎晩簡単な夕食をすませた後に、オンラインゲームでチェスをする。チェスが好きな人々は世界中にいる。
訪れたことのない遠い国に住む顔の見えない対局相手ばかりだったがヘルブラオにとって十分な気晴らしになっていた。
こまづくりの合間や、1日の終わりにヘルブラオは好きな紅茶をいれると窓を開けて外を眺めた。
氷砂糖とクリームをたっぷり溶かした紅茶の甘い香りが工房に漂った。
(次の作業も、しっかり集中できるといいな……)
そうやって来る日も来る日もヘルブラオはこまづくりのために過ごした。