『イフ・アイ・フェル=恋に落ちたら』
この曲でも、三人のハーモニーは特徴的です。一定のキーから飛び出さない和音。後半部分に、ジョンとポールの主旋律が入れ替わるなど、複雑な作りをしています。ジョンはこの曲を「初めてバラードに挑戦した」と述べています。ジョン・レノン初期の傑作スロー・バラードでしょう。ジョージの十二弦ギター(リッケンバッカー)が、曲の繊細さを彩っています。(黄盤収録)
『アイム・ハッピー・ジャスト・トゥ・ダンス・ウィズ・ユー=すてきなダンス』
ジョンが作りジョージが歌う曲。
「あいつ(ジョージ)も見せ場が欲しいだろうと思ったから曲を書いた」
偉そうなのか優しいのかわからないですね。ジョンらしいといえばジョンらしいです。そして先ほど書いたようにスピード感がありながらも、切なく哀愁漂うメロディになるのは、ジョン・レノンの曲の特徴です。
それを色付けるのは、やはりジョンのカッティングです。ジョンは一般的に、特別ギターが上手という評価を受けているわけではありませんが、独自のコード進行や、弾き方がとても際立ち、私的にはたまにギターが話しているようにも聴こえます(ジミ・ヘンドリックスも同様)。(黄盤収録)
そしてその切なさを残したまま、スロー・バラード『アンド・アイ・ラブ・ハー』へと綺麗に続きます。
ポールの作る美しく温かなメロディ。ジョージがクラシック・ギターで弾くアルペジオ(コードの構成を一弦ずつ順番に弾くこと)の奥から、ジョンのアンプを通さずに弾かれるギター(J‒160E)が、その温かなメロディを神秘的に彩ります。
難しい技法は特に使用されず、発想やセンスで構成されたようなバラード。初めからライブで演奏することを目的として作られたような曲ですね。(赤盤収録済)
『キャント・バイ・ミー・ラブ』
予約の段階で一〇〇万枚を超え、一週間で二〇〇万枚のセールスを記録した、ポールの大ヒット・ナンバー。サビを連呼するのは、プロデューサーのジョージ・マーティンが、曲にインパクトを付けようと考えたもの。ビートルズお得意のコーラスも省き、演奏もかなりシンプルにされています。この辺りもライブ演奏を考えて作られているのでしょう。(赤盤収録済)