ある日、南條さんのマンションに女性が訪ねてきた。
「貢、いますか」
「あのう、仕事ですが、どちら様でしょうか」
「私は貢と付き合っている華菜と申します、失礼ですが、婚約者の沙優さんですか」
私は息をのんだ、南條さんの彼女、綺麗な人。
「はい、でもカモフラージュです、南條さんからお聞きになっていますよね」
華菜さんは大きなため息を吐いた。
「私達、結婚することになったの」
私は驚いて華菜さんを見た。
「だから、今すぐに出て行って貰えないかしら」
分かっていたが、いつかはくると思っていた日がこんなにも早く訪れるとは思ってもみなかった。
「分かりました」
「そろそろ、私の引っ越しの荷物が届くから、すぐに荷物をまとめてちょうだい」
「今すぐですか」
「そうよ、今すぐよ」
私は荷物をまとめ始めた、元々少なかったので、すぐに荷物はまとめることが出来た。
「南條さんにお礼を言わないと……」
「貢が帰って来たら、私から言っておくから、早く出て行って」
「分かりました」
私は追い立てられるように南條さんのマンションを後にした。
これからどうしよう。お金もないし、住むところもない、仕事もない。私はすっかり途方にくれた。