わたしが再び爪を噛んだとき、「絶対に人違いよ」と大きな声が室内に響いた。出入り口を見る。閉まっていたはずのドアがいつの間にか開いていて、亜矢が、ふふん、と誇らしげな顔で立っていた。
どうしてここに?
そんな疑問をよそに、渡りに船とばかり登場した彼女に、わたしは心から感謝する。
「根拠は?」
憎々しい目つきで、エリが尋ねた。
「ていうか、アンタ誰?」
「新島亜矢」
亜矢は別のテニスサークルに所属している。公認非公認を含め、大学には星の数ほどのサークルが存在する。エリが知らないのは無理もない。
「ごめんなさい。ちょっと立ち聞きしちゃったの」
亜矢が舌を出す。「根拠はこれでーす」と振り返り「こっちこっち」と手招きする。
まさか貴輝が? 証人として?
恥ずかしさでわたしは頬を し赤らめると、ぬぅ~と女の子が顔を出した。
「えっ」
わたしは我が目を疑った。エリとミナも唖然とした表情で立ち尽くしている。
嘘!?
目の前にいる女の子は、コロナ禍でマスクをしているとはいえ、信じられないほどわたしにそっくりだったからだ。
「あなたは……わたし?」
わたしは驚きのあまり、意味不明な言葉が口に出る。