4 相続発生後の遺産分割協議は難易度が高い

不動産は、分割や配分をすることが困難であるという特徴を有している一方で、その不動産が相続財産の大部分を占めていることから、遺産分割における調整は非常に難しいものとなります。それに加え、世帯収入の停滞や将来への不安の増加といった、社会的な背景が相続に関する揉め事を増加させているのではないかと思います。

ウチの兄弟は仲が良いから、相続では揉めることはないと高を括っているケースが多くありますが、これは大きな間違いです。遺産分割協議になると相続人だけではなく、その配偶者やその他の利害関係者が意見を出してくることがあり、問題が長期化・深刻化しがちです。自分や自分の子供たちの将来に不安があるとすればなおさらです。

では、この遺産分割に対してどのように対応すべきでしょうか。結論から言えば、相続発生後に可能な対策は非常に限られたものになります。相続人などの利害関係者間で誠実に・根気よく協議するほかありません。その場合、くれぐれも感情的にならないようにしましょう。近い肉親ほど一方が感情的になると相手も感情的になり、協議がまとまらなくなります。

また、弁護士へ相談する場合にも、可能であればセカンドオピニオンを活用して複数の意見を求めるようにしましょう。弁護士にもそれぞれタイプがあり、考え方もそれぞれです。相性もあるので、一人の弁護士の意見を鵜吞みにせず、まず自分がどうしたいかを優先し、その考えに寄り添ってくれるような弁護士を選ぶようにしましょう。

5 遺言のススメ

相続発生前の対策としては、遺言が一番ではないでしょうか。遺言がある場合、相続人全員が遺言通りの分割を希望しないケースを除き、原則遺言通りの内容で遺産を分割することとなります。そもそも遺産分割協議をする必要がなくなるのです。難易度が高く、心理的なストレスが高い遺産分割協議という手続きを省略することができる遺言は非常に有効な手段といえます。

確かに、遺言の内容が相続人の希望通りではないというケースも多いでしょうが、相続人全員が遺言を拒否しなければ協議する余地は発生しないので、遺産分割を通じてトラブルが発生したり、問題が複雑化したりするリスクを回避することができます。

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