禿げた

それは姉の叫び声から始まった。「は、は、禿げてる」。私「誰が」。

その後、母と姉は私の頭の観察を始めた。

ああでもない、こうでもない、と髪の毛をいじり回した。

後頭部が、円形脱毛症になっていた。

それを隠す為に姉と母は私の長い髪を駆使して隠してくれた。

病院へ行くと「禿が広がったり、数が増えたら来てください」。

さすがに、風の強い日は気分が沈んだ。

闘いは始まったばかり、禿げに負けるもんかより

「禿くらいなんだ」と自分に言い聞かせた。

追伸

その日から母は、禿げの面積と数の係になった。

母は、禿げた部分に産毛が生えてくると、産毛を引っ張り

「ほら、痛いでしょ」と一生懸命盛り上げてくれた。

それからも、何回か禿げたが慣れてきたので、無視した。

自然治癒力あるのみ。 

よく動く口

幼い頃、親から「口から先に生まれてきたみたいだ」とよく言われた。

スゲェー私。口から先に生まれたんだ。私はやはり普通の人と違うんだ。

幼い頃「赤ちゃんは、お腹から産まれる」と教育され信じていた。

ある日、母が「本当にうるさい子、口のチャックを閉めなさい」

左から右に指で口のチャックを閉められた。

驚いた私は自分の指で右から左にチャックを開けた。

追伸

今は、チャックという言葉は古くなり、ファスナーが幅をきかせている。

男性のズボンのファスナーが開いている状態を「社会の窓が開いている」

その窓はどこに続いていて、何が見えるのか、覗いてみたい気がする。