エッセイ 『心に咲いた向日葵』 【第10回】 丸山 珠輝 「大声を張り上げたって誰も来ない」両手を捕まれ、無理やり触らせられ…。ことが終わると、涙を流しながら夢中で手を洗い続けた 【前回の記事を読む】「覚えるともうかるぞ」私はマッサージの"スペシャル"の意味をようやく理解した。そう言って横になっていた男は上向きになり…「スペシャルなんか教えていただかなくて結構です。そんなことまでして稼ぎたくありません」「おめえ、ようく考えろよ。めくらってのは、人に迷惑かけることが多いんだろう、そんな時に札びらちらつかせてみろ、少しはおめえらに手を貸してくれる者も出てくるってものよ。世の中…
小説 『霧は、アンダンテで流れ行く』 【第4回】 余語 眞二 「かあさんはね、日本が戦争に負けてよかったと思ってるの。」満月を眺めながら、母は静かにつぶやき、言葉を続けた。 【前回記事を読む】「初めチョロチョロ中パッパ、赤子泣いても蓋取るな」小学5年生の夏休み。キャンプ場で初めて飯盒でご飯を炊く山田は、家から徒歩で30分ぐらいかけて小学校に通っていた。そのおかげで脚腰が強くなったのか、走るのが早かった。とくにマラソンは学年でもトップクラスだった。山田が親指ほどの大きさの紫水晶を見せてくれたことがある。山田の家から20分ほどのところにあるお寺の近くに水晶山と呼ばれてい…