「さぁ~てと、俺は華ちゃんにミルクを飲ませてオムツを取り替えて寝かしつけたら行くぞ」
十年前の俺が頑張って華ちゃんのお世話をしてくれたように、俺たちも覚悟を決めてこの三日間しっかりやり抜かないとだめなんだ。こんな小さな華ちゃんを一人過去へ預けるんだからな。泣いている暇はないぞ。
それからの俺の行動は早かった。華ちゃんにミルクを飲ませてゲップをさせてからオムツを替えた。そして寝かしつけてそぉ~っとバスケットに寝かせた。およそ三十分弱。
「これで準備よし。いくか、おっと忘れそうになった。ペンとメモ帳」
華ちゃんバスケットなどと自分の出張の荷物を持って玄関にきた。ここからはどうしたらいいのかなんてわからない。玄関の足ふきマットの上に華ちゃんバスケットとバッグを置き、俺は靴を履き玄関に立った。自分の荷物を持ち目をつぶり願った。
どのくらい経ったかはわからないがどこからかすぅ~と風が俺の頰をかすめた。目をあけると十年前俺が住んでいたアパートの玄関だった。
「やった。こられた……よし。メモを書いて俺は戻るぞ」
ここからは前にお話しした通り、華ちゃんは十年前の俺が見つけるまですやすやと寝ていてくれる。そして、俺は来たときと同じに目をつぶり願った。ちゃんと今のうちの玄関に戻って来られた。うちを出る前に奥さんにメールをしなくては、気をもんでいるに違いないからな。
「華ちゃん送ってきたよ。三日間俺たちも無心で頑張ろうな」
奥さんからの返事は早かった。俺がスマホをしまう前にはもう返信がきていた。
「ありがとう、見届けてくれて。私も頑張る、あなたも頑張ってね♡」
あたまが柔軟で芯の強い奥さんで本当によかったと思った。それから俺は出張先へ向かった。