(F60.2)非社会性人格障害、(F60.3a)衝動型人格障害による多殺人者症例
A case report of a man who committed several murders and diagnosed as(F60.2)dissocial personality disorder and(F60.3a)emotionally unstable personality disorder
石川文之進 鈴木三夫 茅野真男 村瀬活郎 石川叔郎 石川経子 原田元 深見忠典
要旨
元プロボクサーで傷害致死事件を3度起こし、服役後は路上生活者として生活保護を受給、74歳で脳梗塞を発症し右半身不全麻痺となった75歳男性の症例報告を行う。病前性格は情性欠如、衝動性、爆発型、背徳症であり、本症例は劣悪な家庭環境に起因する病的人格を有し、中核精神病質、正しくは仮性精神病質と認められる。
KEY WORD:脳梗塞、中核精神病質、仮性精神病質患者概要
家族歴
父方・母方:生死ほか詳細不明。
同胞(本人含む):男子2 人、女子3 人。
本症例は長男。兄弟全てと音信不通。
本人歴
男性、当院入院時75歳、元プロボクサー。出生、幼少期の成育状況、および当院入院数年前までの生活状況不明。本症例申し立てによれば、「妻は3人いた。先妻とは離婚、後妻とは死別」「先妻との間に2 子(女子1 人+流産〔男〕)いたが、所在などは不明」。発症前の性格は、情性欠如、衝動性、爆発型、背徳症(moral insanity)。74 歳:ホームレス。脳梗塞発症、右半身不全麻痺。両下肢、右上肢運動が不十分。75 歳:生活保護を受給し、7 カ月時、介護付き施設に入居するが、暴言・暴行が次第にエスカレート。メマンチン塩酸塩錠投与でも不効。10 カ月時と11 カ月時に各4 回、暴行・外傷行為あり。翌月はじめに、当院の最重症閉鎖病棟に任意入院。
犯行概要
表1 参照(本症例申し立て)。