彼女にはどんなキスをするんだろう、どんな愛を囁くんだろう、そんなことを考えていたらドキドキしてきてしまった。この間の夜のように蕩けるキスとドキドキする抱擁を彼女にしてるんだろうな。やだ、私ったら……顔が真っ赤になるのを感じた。
「沙優、どうしたんだ、顔が真っ赤だぞ」
「えっ、なんでもありません」
彼は不思議そうな表情を見せた。あっ、そうだ、私どうしてベッドに寝てたんだろう。彼に聞いてみた。
「南條さん、私、どうしてベッドに寝てたんですか」
「ああ、俺が帰ってきたら部屋で毛布にくるまってたから、ベッドに運んだ、先にベッドで寝てていいんだぞ」
「だって、彼女さんとデートかと思って、彼女さんと一緒に帰ってきてベッド使うかなあって、だから……」
彼は私の言葉を遮った。
「馬鹿だな、沙優は。沙優がいる部屋に彼女は連れてこないよ」
「あっ、そうですよね」
やっぱり彼女さんとデートだったんだ。そう思ったら、急に涙が溢れてきた。
「沙優、どうした」
私は目にいっぱいの涙を溜めてこぼれ落ちるのを堪えていた。
「ごめんなさい、私……」
そんな私を彼は抱き寄せて、頬にキスをしてくれた。
「仕事に行ってくる」
「はい、いってらっしゃい」
彼は仕事に出かけた。
ライ麦パンのサンドイッチのお皿が空になっていた。あっ、食べてくれたんだ、彼女さんと一緒だったのにご飯食べなかったのかな。今日はどうなんだろう。聞けば良かったなあ、また夜食に残しとけばいいか、私は買い物に出かけた。
南條さんは何が好きなのかな、和食かな、それとも洋食かな。今日は五目寿司作ろうかな。
五目寿司の材料を買って、マンションへ戻った。帰ってきて夕食の準備をする。静寂の中、時間だけが刻々と刻まれていく。
時計の針が深夜零時を指した。今日も彼女さんとデートなんだ。二人の愛し合う姿が次々とフラッシュバックのように映し出される。ベッドで先に寝てもいいと言われたが、自分の部屋で毛布にくるまっていた。