1.母となり、子の愛を知る

助産師、母になってわかったこと

助産師は出産と初期の育児支援のプロであるはずが、出産前の私は、若気の至りというか、子どもの育て方も知らないくせに、偉そうに子育て支援とか言う「知ったかぶり助産師」だった。

長男が生まれる直前、切迫早産で入院中暇だった私は、マンガ『ママはぽよぽよザウルスがお好き』(青沼貴子、婦人生活社、1993年)を読んで、初めて子どもは怪獣と知った。堅苦しい育児書の知識はほとんど使えないとわかった。

歩くようになると子どもはママめがけて突進してくる。本当に「男の子は痛い」、散らかし汚しまくり怪獣で破壊の天才だ。私の育児のバイブルは『ぽよぽよザウルス』、そして、参考書は『ひよこくらぶ』(ベネッセコーポレーション)や『ベビモ』(主婦の友社)などの育児雑誌。

ママたちの経験談、現在進行中の育児の様子が掲載されていて育児書より参考になり励まされた。助産師なのに子育てはこんなに大変と知らなかった。親の支援がなかった私は、育児雑誌と保育園の保育士の先生方に支えられて、なんとかやってこられた。

子育ては知識があっても経験のない人にはわからないことを思い知らされた。そんな情けない母親だったのに、子どもは「ママ、ママ」と私を慕ってくれる。私の泣き顔にさえ、子どもは笑顔で応えてくれる。抱きしめると温かい。抱きつかれると胸がきゅんとする。握られた手の向こうの可愛い笑顔に癒され、愛おしさでオキシトシン全開になる(オキシトシンとは別名子育てホルモン、幸せホルモン)。

さっきまで大声で泣いていた憎らしい小悪魔、なのに涙がほっぺについたままにっこり笑われると天使だったのかと思う。子どもと一緒に過ごす時間の中で、一喜一憂しながら、実は、私こそ子どもに愛されているのだと知った。

こんな私を慕い、頼りにしている、子どもは健気だ。もっと上手に育ててくれる親のところに生まれてきたら、こんなに大変な思いはしなかっただろうに、なんで私のところに来てしまったかな。それだけで奇跡だ。子どもから受けた愛に私は応えられているだろうか。