6月とはいえ、閉め切ったアパートの中は熱気と湿気でむせ返っていた。刑事達はハンカチで額の汗を拭きながら捜査を続けている。朝から今までずっと、一口の水も口にしていなかった。喉が痛いくらいに渇いていた。きっと刑事たちも同じであろうと思った。
梅澤は、冷蔵庫から2リットル入りのオレンジジュースを取り出した。刑事の人数分のコップや湯呑みにジュースを注いだ。
「刑事さんたち、喉が渇きましたよね。これみんなで飲んで下さい」と三井に声をかけた。
「いえ、職務中ですから」
三井がかぶりを振った。
「でも、みなさん朝から何も飲んでいませんよ。私も喉がからからですよ」
「教授は飲んで下さい」三井が答えた。
「そんなこと言っても……」
梅澤は、他の刑事に声をかけた。
「みなさん、ジュース飲んでください」
1人の刑事が、コップのジュースを物欲しそうに眺めながら、
「いえ、勤務中ですから」と断った。
梅澤は再び三井刑事に声をかけた。
「ほら、あなたが飲まないから、みんなが飲めないんですよ。飲んで下さいよ」
「いえ、職務中ですから結構です」と三井は再び断った。
梅澤も、一人で飲むのは申し訳無く思った。
「じゃ、僕も勤務中ですから」と言った。
目の前で、三井が吹き出しそうになるのを堪えていた。