そんな十二月の寒いある日、その日は雨が降っていた。仕事から戻ると、マンションの入り口付近に女性が倒れていた。
「おい、大丈夫か」
揺り起こすが全く反応がない。
「熱い、熱あるんじゃないか」
おでこを触ると確かに熱がある。俺はその女性を部屋に運んだ。
「南條様、どうなさったのですか」
このマンションのコンシェルジュ高城が声をかけてきた。
「入り口に倒れていた。熱があるようだから部屋に運ぶところだ」
「医者を手配致しましょうか」
「いや、大丈夫だ」
「何かありましたら、なんなりとお申し付けください」
「ああ、よろしく頼む」
「かしこまりました」
俺は彼女を部屋に運び看病をした。彼女は唇を震わせて、寒さを訴えていた。毛布で身体を包み、おでこにタオルをのせて冷やした。これが西ノ宮沙優との出会いである。