【前回の記事を読む】心理カウンセラーが「毒親に育てられた女性たち」に抱いた懸念
毒親から逃れる──心理的な距離を目指して
いったん物理的な距離を取り、毒親とのかかわりは落ち着いたかに見えた。しかし、依然として彼女らは、自分の心の中に毒親を抱えていた。
ここからは自分の心の中の毒親との戦い、すなわち自分自身との戦いとなっていく。そしてそれは、カウンセラーとの戦いへとつながるのだ──。
事例1 母にすがらずに生きるなんて可能でしょうか
面接室に入ってきた姿は、げっそりとしていて、病み疲れたような姿だった。
服装はあまり変わっていなかったが、態度には、どこか投げやりのような、どうでもよさが感じられた。それでも私に、何か話さなきゃ、報告しなきゃとでもいうように、これまでのことを話し始めた。
その表情には、かつて見せた柔らかい面影は一片もなく、私の顔を見ないままに淡々と、最初にカウンセリングルームを訪れたときよりもはるかに淡々と語り始めた。