だが、計画を進めるには障害もあって……
(これ以上進めたかったら、もっと功績を上げろってせっつかれてるしね……新型の導入、スムーズに行ってくれるといいんだけど)
自信はあるが、不安というものはひょっこりと首をもたげてくる。書き進めていた手が止まり、ため息をつこうとして、
「若いのに、そうため息ばっかつくもんじゃないぞ」
声と共に視界の端から伸びた手が、テーブルの上にサラダや目玉焼きなどを置いていく。行動を読まれたことが少し恥ずかしく、リリアは「何よー」と店主に口を尖らせた。
「色々と悩み事があるんだからしょうがないじゃない。自然に出ちゃうんだから」
「そういうもんかもしれんが、それでもため息はつくもんじゃない。しかもウチに来る度についてるし、食べる時くらいは抑えておきな。……ほれ」
そして更にもうひと皿、彼はテーブルの上に置く。トーストに野菜やハムを挟んだサンドイッチが、その皿には乗っていた。しかしリリアはそれを見て首を傾げる。
「あれ?確かここのモーニングセットで出てくるのって、トーストじゃなかったっけ?」
「ま、そうなんだがな。けど色々疲れてるみたいだし、常連さんってことでサービスしといた。他の客には内緒だぜ?」
「そ、そうなの? ……あ、ありがとう……」
「おう。まあ何にせよ、うまいもの食べて悩みなんてどっか置いちまいな。ちょっとでもそれができりゃあ、後でなんでこんなこと悩んでた? みたいになるもんだ」
「……むう、そう単純なものでもないような気がするけど……でも、そうね。ちょっと参考にしてみるわ」
重ねてありがとうと言い、しかし続けて「自分でうまいものって言うのはどうかと思うー」と笑いながら言う。店主は
「でも実際うまいだろ?」
と返し、厨房へと戻っていった。まったくと言いつつ、リリアはサンドイッチを食べる。彼の言う通り、美味しいのがちょっと悔しかった。