【前回の記事を読む】工房長は17歳少女。「命がけ!妥協してる余裕ないのよ!」

この才気、伊達ではない

リリアの鼓舞に奮起した工房員達は、すぐに装甲の再鍛造に取り掛かる。責任者であるリリアはというとその作業を取りまとめ、かつ武装の組み上げも並行して進めたのだった。

この才気、十七で工房の長に任命されたのは伊達ではないということだ。ただ当然負担は大きく、最近は工房に籠っての徹夜を繰り返している。気丈に振る舞って疲れた様子を見せない彼女に、工房員達は尊敬と共に同情の眼差しを向けた。

彼らの視線に、リリアがうっと後ずさる。他人にも自分にも厳しい分、そういった視線にはリリアは慣れていないのだった。気恥ずかしさからか、口調が少しおかしくなる。

「な、何よその、湿った視線! し、心配なんかしてもらわなくても大丈夫よ! 別にこれぐらい、なんともないんだからね!!」

「……でたな」

「ああ、でたよ」

「でましたなあ」

「「「リリアの得意技、変な強がり」」」

これする時って大抵大丈夫じゃないんだよなーと、小声で工房員達が話し合う。ふと、彼らは現在の進捗状況を思い返した。

装甲の問題は無論クリアしなくてはならないが、武装の製作はリリアの頑張りもあってかなり進んでいた。

となると残りの問題は、装甲の件だけだ。武装の製作に回っていた魔道士もそちらに回るだろうし、最終チェックだけはリリアにしてもらわなくてはならないが、それは双方が完成してからでもいいはずである。なら今の段階では――

「リリアにそう無理させる必要もないんじゃね?」

一人がぼそりと言う。

その意見に彼らは一人一人頷いていき、最後に一斉にリリアに向き直って、

「「「確保ーーーーーーーーーーーーー‼」」」

「きゃああああああああああああああああああああ!?」

一斉に飛びかかり、担いで運び出す。

「ちょっと、私工房長でしょ!? なのにこんなことして、あーもう、あんたら覚えてなさーーーーーーーい!」

当たり前と言えば当たり前の彼女の抗議に工房員達は生暖かい笑みを返し、「だったらちゃんと休みもとってくれ」というアーサーの一言と共に外へ放り出されるのだった。