【前回の記事を読む】「保育園」が幼稚園や学校と比べて恵まれている点とは?

「信頼」~本当の意味での“自信”や“大人への信頼感”を

周囲の大人に対する子どもの信頼は、毎日の小さな具体的な事実の積み重ねによって強くなっていきます。保育園に入園してきた最初のころの子どもは、不安と緊張と頼りなさがいっぱいの状態です。

それが毎日の保育のなかで、必要な援助をしてもらったり、不安感や嫌な思いを理解してもらって、そのような思いが少なくなったり解決されたりすることによって信頼感を強めていきます。また必要な援助をしてもらうことで、できないことができるようになったり、うまくできたことを褒めてもらったりすることによっても信頼感を強めていきます。

「安全」や「清潔」、そして「秩序」といったことに重きが置かれていて、一人ひとりの子どもの気持ちや状態への配慮が十分になされていないと、子どもは信頼感を強めていくことが難しくなります。

「わかばの保育」においては、安全や清潔、そして秩序も考慮しつつ、子どもの健全な発達を実現するためには、子どもが大人に対して信頼感を持っていることが大切であると考えています。そのためにクラス担任だけでなく、園のすべての職員が子どもの立場に立ち、子どもの気持ちをできるだけ配慮することをいつも忘れないようにする姿勢を大切にしています。

なお、つけ加えておきたいのは、子どもたちの現実を深く見つめたとき、子どもたちが実存的な意味で無意識のうちに「不確実感」の思いにとらわれていることです。

この「不確実感」は有史以来存在していると考えられていますが、現代の社会の変化の激しさ、多様な価値観の併存、そして情報の洪水などによって、子どもだけではなく大人にも拡大している現実があるように思います。この「不確実感」への理解と、具体的な生活場面での配慮がないとき、子どもへの過度のやさしさや甘さが起こり、子どもに本当の意味での「自信」や「大人への信頼感」を持たせることができないように思います。