はあぁ。これのどこが。私はこの服に勝てるほど派手な顔はしてないし、小柄な私にこの花は大き過ぎやし。これでは三十すぎのオバサンだ。趣味悪過ぎ。いやいや問題は服ではなく、コンサートをどうするかだ。この緊急事態にどう対処するかだ。明日のためにとパックやらマッサージやらをされて布団に入ったけれど、とても眠れない。いっそ、柵を飛び越えてと思いバルコニーに出て下を見たけど、骨折は免れないだろうと断念する。
控えめなノックが聞こえた。ドアを開けると、妹が立っていた。
「お姉ちゃん、ちょっとええ?」
ええよ。妹は私と同じくらいに背中まで伸ばした髪をきっちりとツインテールにして、パジャマ代わりにしてるTシャツとスウェットのパンツ姿だった。私はといえば、絹のガウンを羽織りその下はこれも絹の袖なしのオフホワイトのロングのワンピース。この風体だけでも、私たちが姉妹だと思う人はいないだろう。
「明日、わたしが変わろうか」
えっと言う声も出ず、マジマジと妹を見つめた。いつになく妹は悪戯っぽい目をして、私に笑いかける。釣られて笑ったものの、真意を見抜けない。
「お姉ちゃん、明日のコンサート、めちゃ楽しみにしてたでしょ。だから、行っといでよ。わたしが代役をするから」
チケットが取れたとき、私は妹に散々自慢した。
「代役ったって。ママが許すわけないやん」
「だから、わたしがお姉ちゃんの衣装を着て、お姉ちゃんの部屋にいてる。背格好も髪型も似てるから、黙って後ろ向きに座ってたら分からへんて」
とはいうものの、パーティが始まれば一気にばれる。それと、私はどうやって家から抜け出せばいいのやら。
「大丈夫だって。わたしの服を着て、帽子で顔を隠して出ていったらいいよ。わたしがどこへ行こうと誰も気になんてしてへんから」