「加納屋さん、神崎家の名前、継いでくれるって。三男坊さんだから。今どき、嫁の籍に入ってくれる人ってなかなかいないし。これ以上の縁談はないって思ってるわ」私がまた沸騰するのが分かっているのだろう、母親はぼそっと言った。「なんでそこまで家に拘るの。そんなん、昭和の時代に終わってるって。時代遅れ、時代錯誤、古くさい」私もできるだけ声を抑えた。「朱里が生まれたときは、お祖母さまは喜んだのよ。でも映美が生…
[連載]渦の外
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小説『渦の外』【第13回】今中 浩恵
こんな家早く出ていきたい。けど…気づかなかった母親のやつれ
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小説『渦の外』【第12回】今中 浩恵
私は、自立できてなかった...「何もかもに満たされた部屋で何にも満たされない私」
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小説『渦の外』【第11回】今中 浩恵
「裕福に暮らしている人は、誰一人いなかった」私を受け入れてくれた卓球場
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小説『渦の外』【第10回】今中 浩恵
「それって嫌み?」妹が思わず目で訴えかけた…姉の衝撃な一言
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小説『渦の外』【第9回】今中 浩恵
「逃げ場でもあり、憩の場でもある」卓球場。そこに集う人々
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小説『渦の外』【第8回】今中 浩恵
「なあ先生、」女子高育ちの非行少女の“お願い”に塾講師は…
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小説『渦の外』【第7回】今中 浩恵
【小説】「できが悪いなんて、思うたことないよ。明日はおいでや。約束やで」
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小説『渦の外』【第6回】今中 浩恵
【小説】夜の街で「暴走族に声をかけられた」少女たちの行き先
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小説『渦の外』【第5回】今中 浩恵
父はダンディ、母は優雅なレディ、妹は美人…私には個性がない
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小説『渦の外』【第4回】今中 浩恵
「なんでわたしではダメなの」跡継ぎに選ばれなかった妹が初めてこぼした本音
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小説『渦の外』【第3回】今中 浩恵
姉妹で1日入れ替わる!? 「行っといでよ。私が代役するから」
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小説『渦の外』【第2回】今中 浩恵
「ここに居るからには、ここの人間になって貰わんと」家出先での新たな生活が始まる
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小説『渦の外』【新連載】今中 浩恵
1人で飛び出し、父親も振り切って…家出少女が向かった先とは