家と庭には恵まれた環境であった。しかし、家の中と、外の風景とは大分違った。それは言葉を持つものの運命なのかもしれない。私の描く理想と現実は重なり合うことはない。
朝、玄関に置かれた何足かの靴を外に出して掃除をしていた。そこへ舅が来た。
「四角い所を丸く掃いたって奇麗にならないんだぞ。角をしっかり掃かないとやった事にならないからな。やり直ししろ」
と、大声で怒鳴った。
「はい」
と、即答した。
舅は、玄関で私の掃除を監視カメラのように始終見ていた。
「そうじゃない! サッサッともっと手早くできないのか!」
アドバイスをしてくれているのだと思う事にしたので、別に何とも思わなかった。ほぼ毎日指摘され怒鳴られる日課だった。
野菜の切り方・味付け、電話応対、服装、などなどあらゆる事が、チェックの対象となっていた。要するに、やる事なす事全てにおいてである。肯定的に認めようとする気持ちはいっさいない。
それでも、頑張る! 私。
【前回の記事を読む】夫の家に入るということ:新婚の甘い香りの日々は消え、この家では怒鳴り合うことが普通の会話なのだと理解した。
次回更新は12月13日(金)、22時の予定です。
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