三古びた木造の寮には、もう寮母だった四葉(よつば)さんしか残っていなかった。四葉さんも他の職員たちも八月末で解雇され、寮は売却されるということだった。玄関前に並んでいた鉢植えは片づけられ、寮の中も、これまであった掲示板やカレンダー、姿見、鳩時計などのこまごまとしたものがすっかりなくなり、がらんとして静まり返っていた。突然、みんなが暮らしていた、あのにぎやかだった頃のたくさんの思い出が幻のように甦…
[連載]天命愛憐
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小説『天命愛憐』【第4回】せと つづみ
隣国で起こった革命。皆が豊かに、平等に暮らせる国になったというが…。
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小説『天命愛憐』【第3回】せと つづみ
急な解雇と寮からの追い出し…。救いの神は母の幼馴染だった。
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小説『天命愛憐』【第2回】せと つづみ
工場で働くのは不幸?!根掘り葉掘りと聞かれ、一方的に決めつけられて…
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小説『天命愛憐』【新連載】せと つづみ
落雷事故に巻き込まれる沙茅、そこに一人の記者が訪れる…
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