「龍神守の里人よ! さらばじゃ」
赤龍は凄まじい勢いで空に駆け昇って行った。
「龍族の中で妃を背に乗せるのは、余が初めてじゃ!」
「どうもこの、ひらひらとした衣では乗りにくいぞ。それにこの領巾が顔を覆って前が見えぬわ」
「先ほどそなたは里人達に衣を脱ぐと言ったが、今脱ぐか? すっ裸なら乗りやすいであろう!」
羅技姫は急に恥ずかしさを覚え、顔を赤くした。
「さっきは成り行きで……」
赤龍が天に昇って行く様子を見ながら、紗久弥姫は清姫に尋ねた。
「清姉上様? 羅技姉上様は今、衣を脱ごうとされたのですか?」
紗久弥姫は思わず頬を赤く染めた。
「ほほほ! 羅技らしくて良いではありませぬか」
清姫は里人達に向かって言った。
「皆様! 私達は龍王の皇子殿の妃として、これより天上界へ昇ります」
「別れるのはとても寂しいけれど……私は皆様の事を忘れません」
清姫と紗久弥姫はそれぞれ里人達に別れを告げ、白龍と青龍に抱かれて天上界に向けて昇って行った。森に居た里人達の大半は、それぞれ新たなる地に向けてその場を去り、一方、その中の一握りの里人と重使主、仲根はこの森に留まった。
そして天空の龍・森と山の龍・火の山の龍・水の龍と共に、龍神守の姫様方がこの地を見守っていると後世に語り伝えた、「龍神伝説」と。