ゴーゴーバーでの出会い

この店の一番の売れっ子ダンサーは九頭身の混血美女、シャーリーだ。父親はドイツ人だそうだが、一○年くらい前に家族をマニラに残し帰国してしまい現在は音信不通となっているらしい。

ショートボブに強い意思を感じさせる瞳。筋が通った小鼻と怪しい笑みを放つ薄い唇。それらが絶妙なバランスで、ハーフ特有のエキゾチックな顔立ちを形成している。胸はそれほど大きくはないが、引き締まったボディーは流れるようになめらかな曲線美の極致。スラッと伸びた長い足と魅惑的な足首の(くび)れ。体のどのパーツを取っても完璧で、サイボーグを思わせる。

シャーリーがステージに上がると、正嗣はシャーリーだけを見つめていた。シャーリーが図抜けて人気があるのは誰もが認めるところだったが、正嗣の好みからこの店のダンサーに順位をつけると、シャーリーの次がアミティス、三番目はノラ、続いてジェニファー、ノイミーといったところがベスト5か。

アミティスは日本人好みのカワイイ系の顔立ちで、いつも笑みを絶やさない明るい子。グラマラスなボディーでいつも楽しそうに踊っている。色白なのは北の高原地、バギオ出身だからだろうか。

ノラはミンダナオ出身の一七歳。シャーリーやアミティスより五歳も若い。顔も体もまだ幼さを残している。一五○センチくらいの小柄な褐色の美少女。体はやせこけているが踊りはダイナミックで、時折ステージ上で見せる彼女の大技である両足を前と後ろに伸ばした縦の(また)()りは圧巻だ。そして、その股割りの姿勢でねっとりとした視線を客に向けてくる。

ジェニファーはシャーリーと同じくらいの一七○センチの長身で、白人が好みそうな濃い美人顔をしている。正嗣は初めてこの子を見た時、髪の毛を逆立てたようなヘアスタイルから、孔雀のような女だなとの印象を持った。だから正嗣はいつも彼女を勝手にピーコックと呼んでいる。アミティスと同じくノリがいいので、話をするには楽しい子だ。

ノイミーはチャイニーズ系で気が強そう。ステージで踊っている姿をあまり見ないが、この店で日本人が一番好みそうな顔をしている。しかし、この子を連れ出した日本人がクラミジアを移されたとのウワサを聞いたことがある。気をつけねば。

正嗣は気に入った店の女の子は店外に連れ出さないようにしている。一度特定の子を連れ出すと、それ以降その子は自分の所有物のようにべったりとまとわり付いてくるし、他の子を呼んで話したりしていると、連れ出した子やその友人たちから浮気者と見られたりして嫌な雰囲気となる。そうなるとその店には行きづらくなってしまう。だから、正嗣はノアズアークでは特定の子と深い仲にならないようにしている。

いくらシャーリーをいい女だと思っていても、やりたいという気持ちは封印した。そうなると、自然とその気持ちも萎えていった。だから、シャーリーが客に連れられ店を出る姿を見ても(店に通い始めの頃は嫌だったが)、何とも思わなくなっていった。