彼は女の子に近寄ると、軽々とその子を肩に担いで、再び信じられないほどの力で泳ぎ始めました。そして、池の中ほどの柵にたどり着くと、彼女を柵の向こうに放り投げたのです。そして、ものすごい、信じられないほどの意志と力で、人間業とは思えない力で、自分も柵の向こうにたどり着いたのでした。
彼は疲れ果てていましたが、女の子を肩に担いで岸まで泳ぎ渡るエネルギーは残っていました。岸に着いて、砂浜に女の子を投げ出すと、岸辺は家に、その子の家に変わっていました。思いがけないことに、女の子の体は微かに動いていました。まだ横たわったままでしたが、動いていたのです。彼女は生きていたのです! 彼女の父親、あの大きなガイドも、砂浜に立っていて、驚いたような、嬉しそうな顔をしていました。フォールも、自分があの死に至る無感覚に負けなかったことを、心から嬉しく思い、自分の内に宿っている力をついに信じることができたのでした。
フォールは放心状態で目が覚めました。夢とは思えないほど長く、詳細な夢で、細かいことまで今でもはっきり思い出すことができました。池はとても暗くて、不気味でしたが、その不気味な暗さの中に不思議な美しさがありました。下の方に引っ張られ、手足が無感覚になっていく恐怖、たけり狂ったように不意に湧きあがるエネルギー、そして、ついに女の子を救った時の至福感と高揚感。それにもまして忘れられないのは、あの特別な存在でした……あれは、誰だったんだろう?
最後に振り絞った力は、自分の力ではなく、人間業を超えていた……きっと、あの特別な存在と出会ったおかげでもらった力だ、と彼は感じていました。池から戻って来るのに、絶対に会わなくてはならない存在だったんだ……だけど、本当に、誰だったんだろう?