「余は、龍王の長男で名は(びゃく)(りゅう)である。天の命でこの地上界の天空を守る龍だ。そなたが持って来たのは父上龍王の鱗である。父上が天上界に上がられる時、この地に住む里人。つまり、そなた達の先祖に鱗を与え、いかなる天災からも里人を守って豊かに暮らせる様にと、守り鏡として与えしものである」

「えっ?」

白龍は清姫の手をそっと放すと、清姫は白龍の前に畏まって両の手を付いた。

龍神(たつ)(もり)の里を阿修のもの達から救って下さいませ」

「龍族は天の定められた理により、地上界には関われぬ」

清姫は項垂れてぽろぽろと涙を流した。

「浅はかなお願いを致しました。申し訳御座いませぬ」

白龍は清姫のその美しさに心を奪われた。

「よ、余の妃になってはくれぬか?」

「私は巫女姫で御座います。一生、龍神様に仕える身であります。今、阿修の国の者が里を攻めて来ております。里は父上共々滅びるでしょう。私もここで祈りながら父上様達の元へ参ります」

白龍は清姫の言葉に眉をしかめた。

「龍王は龍神ではない。祈りながら命を絶つ等とはなんと愚かな……余は絶対に許さぬ。そなたは余の后となるのだ! 否とは言わさぬ。さすれば多少なりと力添えが出来るであろう」

白龍は父の鱗を手に取ると冠に変え、清姫の頭にそっと置き、清姫の衣を龍族の衣に変えた。

「まあ……」

「流石によく似合う! 余が惚れただけの事はあるなあ」

「嫌です。私は巫女姫。神へ一生身を捧げる身。何方であろうと嫁ぎませぬ」

その場から逃げようと駆けだした清姫を白龍は方袖で優しく抱き止めた。