この時、フォールは目が覚めました。「わぁ、水がぼくのところに来て、話しかけるなんて! メモしておかなくちゃ」と彼は、不思議に思いながら、紙とペンを探しました。この夢にはたくさんの感情と情報が溢れていました。今すべてを書きとめなければ、数時間のうちに忘れてしまうだろうことは、わかっていました。まだ真夜中でしたが、彼はすぐさま起き上がって、グーグル検索しました。
彼が検索したのは、「二つの蓋が被さった水」で、重く不自然な何かでしたが、いくら調べても、夢で見たような水は見当たりませんでした。しかし、驚いたことに、あることが、彼の注意を引きました。それは、水の分子が、夢の中で見たブドウの房のように、房状の構造をしているというものでした。これは、彼にとり、度肝を抜くような発見でした。「うわぁ、夢とおんなじだ……」フォールは一瞬頭が真っ白になりました。
「だけど、あの蓋は何だろう? あれは汚染水だったんだろうか? ぼくは、汚染水については、何にも知らないしなぁ。なのに、なんでぼくのところに来たんだろう?」
そんなことを考えているうちに、頭の後ろの方からとどろくような声が響いて来ました。
「水のことを知りたいかね。では、グーグル検索では見つかる筈のない水のことを教えてあげよう」
「やばい、これはメタトロンじゃないか」とフォールは、ドギマギしながら不安混じりに思いました。すべての天使の中で、メタトロンほど、理解に苦しむ謎めいたメッセージをもたらす天使はありませんでした。この天使はいつもフォールに、想像もつかないほど、複雑で入り組んだ概念を示してくれるのでした。「わかっているとも、フォール。だがね、ほかにやりようがないのだよ」そして、大きくとどろくような笑い声が、フォールの頭に響きわたりました。
「そうですよね、もちろん、ぼくの考えなんかお見通しですよね……わかっているはずなのに……」とフォールは恐るおそる答えました。「……でも、何がそんなに面白いんですか?」
「面白いともフォール、お前は面白いよ。自分を見てごらん、自分の言っていることを聴いてごらん! お前はいつもわたしを楽しませてくれるよ!」
そう言われて、フォールは途方に暮れてしまいました。なんて答えればいいのでしょうか?
そこで、彼はとりあえず「楽しんでいただいて、光栄です」と言おうとして、思い、自分でも一番驚いた発見を口にしました。「水は生きている! 水は生きものなんですね! 知らなかった!」メタトロン直しは、大きなため息をつくように、フォールの言葉を遮りました。
「水はみな、お前の中を流れ、お前の大部分を占めているのだ。それなのに生きていないというのか? それとも、お前は死んだ水なのか、フォール?」
フォールは呆然として、返す言葉がありませんでした。口をあんぐり開けて、答えあぐねていました。
大天使は、言葉を続けました。
「水の重要性とはね、フォール、純粋で清潔であることなのだ。地球環境は、変質させられた水によって、影響を受ける。このことと、そうなったら、お前の世界で何が変わるかをよく考えなさい。
まず、水の重要性について話すから、よくお聴き」