停滞するエネルギー消費原単位
筆者がESCOモデルを日本に普及させようと努力し始めた1990年半ば頃は、確かにまだオイルショックを生き抜いた現場力に溢れた省エネ先進国的な雰囲気がありました。
しかしながら、実際の現場を訪れてみると「絞り切った雑巾」状態の工場は、オイルショックを生き抜いた限られた業種・業態であり、1980年代に日本が世界を席巻した機械業界や半導体業界は、まったくそんな状況ではないことが分かりました。
それらの業界では、石油類ではなく主に電力エネルギーを活用して、半導体メモリなどの軽薄でかつ付加価値の高い製品を大量生産しており、その効率的な生産量を確保するためにはエネルギーの無駄を無くすというような地味な発想はほとんどありませんでした。
ただし、それらの業界も1990年代後半に入ると、グローバル競争環境が一変し、厳しいコストダウン要請が出てきたようで、そのための省エネルギー・エネルギー効率化の要請は高まりつつありました。
電気と熱の両方を生み出す大型のコージェネレーションシステム(熱電併給設備)などが大規模工場などへ積極的に多数導入されたのも、この時期の特徴でした。
一方、2000年代に入ると、1997年に京都で開催された国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された京都議定書の影響もあり、気候変動・地球温暖化対応へと国の政策もシフトしていきました。
それでも省エネルギー・エネルギー効率化の政策においては、まだまだ「絞り切った雑巾論」が幅を利かせており、なかなか大幅な省エネルギー・エネルギー効率化が進まない状況が続いていました。
つまり、「絞り切った雑巾論」が省エネルギー・エネルギー効率化のなかなか進まない言い訳として、巧みに使われていたというのは言い過ぎでしょうか。
わが国では省エネルギー・エネルギー効率化がどの程度進んでいるかを判断する指標として、「エネルギー消費原単位」というものが使われます。