大きな夢に向かって歩き出したい。だが、それが何かわからなかった。ただ、映画は楽しかったので、また映画館に通い始めた。あまりに映画を観過ぎたので、やがて飽きてきた。一方で、おもしろい映画の脚本を自分で書きたい、とだんだん思うようになってきた。
おもしろい、というのは何かを考えた。わからなかった。わからなかったが、今までいくつもの仕事をしてきたので、そのことを書いてみよう、と思った。
おもしろい……言うなれば『自伝』のようなものだが、かなり脚色した。おまえが英雄だ! と言わんばかりの大変勘違いな男のコメディだった。
詐欺男がかなりお金に困っていたが、あるとき詐欺によって稼ぐことに成功し、大金を手に入れた。そして、そのお金を貧しい人たちに寄付していった。いいことをしたら、自分が救われる気がしたからだ。英雄になる気はなかったが、なぜかまるでサクセス・ストーリーのように、詐欺男は持ち上げられた。
寄付という行為が、後ろめたい気持ちを一掃してくれただけなのに、思いもよらず英雄となった詐欺男の、わくわくするような爆笑コメディだった。英雄となった詐欺男の化けの皮がはがれるのは、時間の問題だった。詐欺の目撃者だった一人の子どもが解決に一役買った。詐欺男はその五歳の子どもに弄ばれるかのように、重い口を開き、警察に捕まった。
他の人が、おもしろいと思うかわからなかったが、脚本としてまとめ、応募した。おかまいなしに、いろいろなコンテストに応募していった。最終的に、賞は取れなかったが、ある映画監督の目に留まった。
『映画化したい』と、監督本人から連絡がきたのだ。俺は、疑いなく舞い上がり、あまりにうまくいき過ぎたことも忘れ、飛び上がって喜んだ。