戦後、この樽が徹底的に破壊され、その結果個人の力により、樽作りが再び始まった。そしてその樽は見事に大きくなり、成功したかに見えた。

しかし、現在皮肉にもその大きな樽の中に個人が、また入り込み始めてしまったのである。

そこで、この章では、どうしたら日本、日本のものづくりは再生できるのか、ポジティブに私見を提案した。ご意見、ご批判を頂けたら幸いである。

ものづくりに貢献した偉人から学ぶ

これまで述べてきたように、日本のものづくりに貢献した人々の共通点を以下の5項目にまとめることができる。

①古代から現在まで金属の熔解・鋳込み・加工技術そして「からくり技術を」育ててきた技術者、職人を大切にし、尊敬する風土が継続して醸成されてきた。

②各個人が事業を起こす際に、「自分はこうしたい、こうありたい」との強い「思い」があった。

③その「思い」を的確に、誰にでもわかる言動で表現した。

④プロジェクトの推進過程で反対や苦難に遭遇しても、自分の主張を貫き、その「思い」を正論までに高めて、賛同者を増やし、厚い壁を打ち破り、事業化(プロジェクト)した。

⑤プロジェクトを後世に伝えるために、将来を担う若者に教育・研修・伝習により、その「思い」を託した。