信頼していない者同士でも、とりあえず酒は酌み交わし、笑いを交えながら腹を探り合うのです。微妙な匙加減なのです。なんと円熟した大人の商売人なんだろうと私は感心し、随分と勉強させてもらいました。
一方関東の業界ではそのようなつながりをもった人たちがごく少数はいたものの、おおかた、商売がたき=ライバル=話もしない、というのが大多数でした。味気ないと言えば味気ないのです。
私も輸入業者として関西の問屋すじの皆さんと商売をさせて頂きましたが、仲良くなるにつれてその輪の中にいるのが心地よかったのを今でも覚えています。非常に洗練された商売人の集団と言えるのではないかと思います。
日本の他の地方ではなかなかこのような集団にはお目にかかれなかったので、やはり関西の商人道の歴史の深さのなせる業だったのかと勝手に解釈しています。
海外との交渉
海外との交渉も同じ人間関係ですから、できればそのような関係性を築いて交渉できればベストです。
ただ、海外の場合生き馬の目を抜くような交渉も避けて通れないこともあることも事実です。
いい方の例としてご紹介したいのはサッカー界における国際交渉です。
サッカー界は国際的にもまずサッカー仲間であるという暗黙の了解があり、アジアではお互いにブラザーと呼び合う習慣があります。国際会議が年に何回も定期開催されているので同じホテルで宿泊し、一緒に飲み食いもよくします。
そんなブラザー同志の国際試合などに関する交渉ではあまりとげとげしいことは言えないという雰囲気もあり、生き馬の目を抜くビジネスとは一線を画していました。
純粋なビジネス界ではもっとドライな国際交渉の方が多いかもしれませんが、それでも相手と中長期に商売を続ける関係を築きたいケースが多いことも事実です。
そのような場合、やはり交渉は明るく、ユーモアを交えてやるというのが王道ではないかと私は考えます。