オーストラリアでは連邦政府と州政府のいずれもがSTEM教育に力を入れるが、その背景にあるのは、国際競争力を高め、これまでの資源立国から科学立国、IT立国に変わろうという国の戦略だ。子どもたちの理数離れ対策でもある。
クイーンズランド州に目を向けても、近年、州立学校では子どもたちの理数離れが顕著に見られる。理数科の教師も不足している。
特に、初等学校では、全般的に理数科に対する教師の意識が低く、教師自身も十分な知識を有していないことが多い。理数科の授業を実施できる教師が不足しているのだ。
そこで、州は2015年に「教育推進計画(Advancing Education Action Plan)」を開始し、2016年からプログラミングやコーディング、ロボット工学を取り入れた授業を行うようになった。そのための専門教師も配置されている。
私がたびたび訪れる学校でも2016年に複数のロボットを購入し、プログラミングの授業を始めた。
2020年度には、連邦政府の助成金(1万9500豪ドル)を獲得してICTの設備や教員の拡充を図るとともに、地域の小学校やハイスクールと連携してデジタル工学のカリキュラムをスタートさせた。
予算は主にタブレットの購入に使用され、ロボット工学とコーディングの学習に活用されている。コーディングクラブが新たに設置され、4年生から6年生の児童が放課後の学習に参加している。
5、6年生は週に1回近隣のハイスクールの授業に参加し、高校生と一緒にロボット操作を行うこともできる。生徒の中には政府が実施するコーディングの大会に参加し、優秀な成績を収める者もいるという。
補助金の獲得に尽力した校長が嬉しそうに話してくれた。
また、私が個人的に親しくしている他校の男性教師は、2015年に政府の奨学金を得て米国のNASAで行われたロケット打ち上げの研修に参加し、その後はSTEM教育推進リーダーとしてケアンズの初等学校を拠点に活躍している。
STEM教育に費やす政府の予算が少なくないことを感じさせる。