ところで、一般の人々は、「ドクターは病気になりにくい」、もしくは、「もし病気になってもいちばん良い病院でいちばん良い治療を優先的に受けられる」と思っているような節がありますが、そんな良いことはあまりありません。
実際は、人の病気を治すのに忙しく、また自分の判断に人の命がかかっているので責任も重く、自分の健康を犠牲にすることがしょっちゅうあります。自分の担当する手術や外来などはまず休めないので、自分が病気でも仕事をやり遂げることが日常的です。
さらに病院には、薬でたたかれても生き延びる強い病原菌を持った患者さんが毎日集まって来ます。ストレスの多い職場と強い病原菌などで、自分の健康にとってはハイリスクな職場となります。
その上に、医者は実際に自分が病気になった場合には、つい病気を軽くみて、手持ちの薬を飲みながら仕事を続け、却って病状が重くなったりします。「医者の不養生」というやつです。
もちろん、医者であったり、病院で働いていたりすれば、それなりの利点として、検査や専門の医師による診察や助言が受けやすいことはあります。もし、病院で突然倒れても、周りにたくさん専門家がいるので、即刻治療を受けることができます。
ある病院で働いている外科のドクターが、最近病院内で心筋梗塞を起こして倒れたそうです。そのドクターは、その日は胸の具合が悪かったのですが、自分が担当する手術を無事こなした後、意識を失ったそうです。早速救急センターに送られ、検査や診断を受け、そして緊急のバイパス手術と進み、救命されたということでした。
これとは逆に、悲しい話もあります。あるドクターは、1人当直の病院で当直中に、夕食に食べたエビでアナフィラキシーショックを起こしたそうです。当直室で呼吸困難に陥り、でも医者は自分だけで当直室から助けも呼べず、次の朝冷たくなっているのを看護師に発見された、という話です。
誰がどの病院でといった具体的な情報は伝わっていないので、もしかすると、「こうなったら怖いよね」という、都市伝説ならぬ当直室伝説かもしれません。