興味深いのは手話が言語の一つとされていることだ。通常学校で何語を教えるかは、各学校が自由に決める。地域のニーズや生徒の実態、学校コミュニティの意見などを参考にして決めるが、教師の確保など条件が整わず、希望通りに実施できないこともある。
何年か実施して、実態に合わなくなれば途中で変更することも可能だ。校長の意向で決まることもあるらしく、校長が代わったらLOTEも別の言語になったという話を聞いたりする。
自分の学校で教えられていない言語を学びたい場合、校長の許可を得て他校の授業を受講するということも行われている。LOTE教育は言語学校や民族学校でも行われている。
言語学校は州が運営し、州立学校の教室や公共施設を利用して放課後や土曜日に行う。公立、私立いずれの生徒も入学でき、遠隔でも受講できる。
ビクトリア州では43カ所の学習センターで行われている。52種類の言語が教えられ、1万8千人以上が学んでいる。学習者数は年々増えており、特に、小学生の履修が増えている。
通常は土曜日の午前中に授業が行われ、中国語、パンジャブ語、ベトナム語、日本語、アラビア語、ヒンズー語の学習者が多い。
民族学校のプログラムは、NPOなどが運営し、集会施設などを使ってコミュニティ言語(地域で話されている言語)や母語を学習する。
州内に167カ所あり、3万5千人が学んでいる。40種類の言語が教えられており、こちらは、中国語、ギリシャ語、ベトナム語、アラビア語、タミル語の学習者が多い。
いずれにしても、LOTE教育は連邦政府の言語教育政策により推進されてきたという歴史があり、外国語教育、母語教育、コミュニティ言語教育としての要素を兼ね備えている。
学習を通して、言語リテラシー、批判的思考力、分析力、課題解決能力などを習得するとともに、異文化理解と異文化を尊重する態度も育成し、将来の就業やキャリア形成にも有意義だと考えられている。