多様な言語が学べるLOTE教育

日本で外国語教育といえば、ほとんどが英語教育。他の言語を教える学校もないわけではないが、公立学校では圧倒的に英語が多い。

小学校で導入された外国語活動も「外国語」という名で呼ばれてはいるものの、大多数の学校で教えられているのは英語だ。

なぜ英語活動と言わないのだろうと思ったりする。外国籍の子どもたちが増えるなか、英語を母語とする子どもにとって英語は外国語ではないはずだ。日本では「外国語イコール英語」と考える向きが強いように思う。

それはさておき、オーストラリアの外国語教育は日本とは違う。多様な言語が教えられている。

そもそも、オーストラリアでは外国語という概念を規定するのが難しい。公用語が英語だから、英語以外の言語が外国語なのだろうか。

でも、国内には英語以外の言語を母語とする人はたくさんいる。だから、ある人にとっては外国語でも、その言語を母語とする人にとっては外国語ではない。

だからなのか、外国語(foreign languages)と言わず、英語以外の言語(Languages Other Than English、以下、LOTE)と言っている。

オーストラリアは、多文化主義政策のもと言語教育に力を入れてきた国だ。移民の言語は権利として保持されるべきであり、社会の貴重な資源としても活用すべきだという認識から、LOTE教育が連邦政府の主導で始まった。

当初は、アラビア語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語、ギリシャ語、インドネシア・マレー語、中国語、そして、日本語の9言語が学習優先言語とされた。

特に、日本語の人気は高く、学習者が急増した1980年代は、「TSUNAMI(津波)」と呼ばれる現象まで巻き起こした。

その後、オーストラリアがアジアの一員としての存在感を高めると、LOTE教育の重点はアジアの言語に置かれるようになり、日本語、中国語、韓国語、インドネシア語が優先言語となる。

さらに、グローバル化の中で公用語である英語の役割が高まり、移民の言語に対する人々の認識も変容し、LOTEを学習する生徒の数は徐々に減少していく。オーストラリア政府も政策転換を図り、優先課題がLOTEから他の分野に移っていった。

とはいえ、オーストラリアのLOTE教育は今も多くの学校で実施されている。学習者の数も学習言語の数も多い。

たとえば、ビクトリア州では、公立学校の9割でLOTEが教えられ、生徒の7割以上が学んでいる。

教えられる言語は24種類。最も多いのは中国語で、イタリア語、日本語、インドネシア語、フランス語、オーストラリア手話(Auslan)、ドイツ語、スペイン語、ベトナム語と続く。