話を戻すと、先の店長に頼めば、「誰それの奥さまは先日このような品物にご興味がおありでした」とか、「この年代の奥さまにはこういった品物が流行りです」といった情報が手に入る。だから、そこの店長は歴代、親睦委員会のメンバーに入ってもらうのだ。

クリスマス例会の予算も破格だ。うちのクラブでは四〇〇万円くらいが相場だ。会場費、食事代(フレンチのフルコースだ)、プレゼント代、お土産のシクラメン代、玉代(コンパニオン費用)、そしてアトラクションに掛かる費用などいろいろだ。そのすべての段取りを親睦委員会が仕切る。親睦委員長の評価が決まる瞬間だ。

奥さまたちから「今晩は楽しかったわね」と言われれば合格。「いつもより盛り上がらなかった」と言われると、その後しばらくは寂しいクラブライフが待っている。

単なるクリスマス・プレゼント以外にもビンゴ大会による景品の争奪ゲームが行われる。

このゲームの成功は、ひとえにそれを仕切って当選者を決定し、景品の引き渡しを差配する司会者の力量・話術にかかっている。なんと、その役が僕に回ってきた。

大学教授だから人前で話すのはお手の物だろう、と無責任なことを言う。成功して当然、失敗すれば何を言われるかわからない。でも、ここはロータリーだ。答えは「ハイ!」しかない。

すべてが終った時、皆の満面の笑顔が見えた。少し安心した。

僕の経験では、いままでの最高額の景品は、赤城山麓の別荘地の土地だった。時価は一〇〇万円ほど。会員の不動産業OC君からの提供品だった。地元の会員はその当選を逃れようと祈る。その後の始末(税金負担など)が面倒だからだ。

当選者は、日本を代表する通信会社の群馬支社長HTさんだった。東京に自宅のある本人は嬉しそうだった。その後、その地に別荘を建てたと聞いた。彼はロータリーが大好きになった。

その後、彼は僕が主催する他クラブへのメーク8(僕はこれを「メーク・ツアー」と呼んでいる)に積極的に参加した。

8:自クラブの例会を欠席しても、その年度内に他クラブの例会に出席すれば欠席分を補填するという制度のこと。

地元の会員はあまり参加しないのに、企業族の会員が進んで参加してロータリーを堪能している。この差は何なのだろうと考えた。

初めは、会員本人の性格、見知らぬ他人と瞬時に仲良くなれるか、つまりは明朗な性格であるかどうかだと思っていた。

でも最近の結論はこうだ。メークに参加できない人は自分の社会的ポジション、特に経済的理由やその人が本業で活躍しているかどうかの世間的評判に起因しているのかな、と思うようになった。どこのクラブに行っても自分のことを知っている人は誰もいない、それは寂しいから自クラブ内に留まろうという発想だ。

この思考がクラブの発展を阻害する。そんな輩(やから)がクラブの中核を占めるようになったら、クラブは鎖国状態になる。普通は先輩たちがそれを正していくはずだが、その先輩たちにもその性向(暗い、内向き、陰湿)があるとコトはやっかいだ。

うちのクラブは、長らくそういった状況に苦しんできた。

この状況をなんとか打開したい。そうした思いが僕のその後の長いロータリーライフ・ワークになっていく。