私達は、マスクを装着し手指消毒などした後で、その看護師についていった。そして、仕切ってあるカーテンの向こう側を見せてもらうと、点滴の針やモニターのセンサー等などを身体中に装着されて、ベッドに寝かされている娘の姿を確認する事ができた。
今日の朝に見送った元気な姿とは、まったく別人みたいな姿になっていた。私は、しばらく他人に声を聞かれないようにして泣く事しかできなかった。
雄二は、姉の横たわる姿を見つめながら黙って立っていた。そうしていると、娘の担当医師が私達に近づいて声をかけてきた。
「薬師さんの家族の方ですか。この度は、娘さんがこのような状態で搬送されるなんて想像もしていなかったので、我々も非常に驚いております!」
「先生、娘の意識は回復できるのでしょうか?」
「分かりません。娘さんがこちらに緊急搬送された時、右側の骨折した肋骨が肺に刺さって呼吸が異常な状態でした。そして、頭部のくも膜下に出血が確認されたので、急いですべての異常と思われる箇所に緊急手術を行いました。あと我々ができるのは、娘さんの経過観察を続けていく事だけです」
先生は私達にそう説明すると、急いで集中治療室から退出していった。私達は、しばらく娘の状態を見守っていたが、その状況を見かけた担当の看護師が小声で話しかけてきた。
「薬師さん大丈夫ですか? 私も、まさか直美さんがこのような出来事に遭遇するなんて、現状を見ても信じられないと思っております」
そう言った後、周囲を確認してからまた話をしてきた。
「お2人とも、ここに残って直美さんの状態を見ていたい気持ちは分かりますが、他の患者さんも治療を受けておりますので、そろそろ退出をお願い致します。直美さんの容体が急変したら、こちらからすぐに連絡致しますので」