認知症の疑いで私たちのクリニックを受診される場合には、「物忘れがひどくなってきました」という訴えがいちばん多く聞かれます。
しかも、2、3年前からとかこの1年特にひどくなってきた、などと症状の進み方は比較的ゆっくりであることが多くみられます。
私たちのクリニックでは、ご家族とともに来院してもらい、まず病気の問診とともに生活全般についての問診を行います。
独居なのか家族と一緒に住んでいるのか、また家事や金銭の管理は誰がやっているのかなどということです。
次に長谷川式認知症スケールなどの知能テストを行い、血液検査を実施します。
問診で聞き取った家庭環境や今までの生活歴、そして今の病状と知能テストの結果で、認知症があるかどうか、あるならばどの程度かという大まかな判断をします。
現在生活に支障があればそれの対処法をアドバイスし、今後の介護環境を整えるよう準備を促します。
認知症をきたす原因となる病気は、アルツハイマー型認知症がいちばん多く、全体の60%以上を占め、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を加えると80%以上となります。
そのほかレビー小体型認知症や前頭側頭葉型認知症、脳腫しゅ瘍ようや精神疾患などの脳の病気もあります。これらを調べるためには頭部CT検査やMRI検査が必要なので、これらの検査をまだしていない方には、総合病院神経内科に紹介して精査をすすめます。
その結果、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などの病気が見つかり、手術によって症状が改善することもあります。また、甲状腺機能低下症というホルモンの病気や電解質のバランス異常などの全身疾患から認知症をきたすことがあるので、血液検査を行って調べます。
さらに、糖尿病、脂質異常症、高血圧症などのメタボ疾患があると認知症になりやすかったり、認知症状が進行しやすかったりするので、これらの病気についてもチェックします。