エッセイ 『ねぇねぇみかどのおばさん』 【第3回】 六谷 陽子 不良とつるみ始めた近所の男の子…。駄菓子屋のおかみが決行したのは「えこひいき」作戦!? 一 みかどを閉店します富山の片田舎から下町に嫁いだ頃は、母も人間関係で苦労したようです。当時は、各家庭には水道は通っておらず、共同水道を十世帯くらいで使っていたのです。そこに行けば、他の誰かが必ずいます。特に水を使う時間帯は同じだから、会わずにすませる、というわけにはいかなかったようです。年配のおばさんたちは、個性的で嫌味を言う人もいれば、優しい人もいます。年配らの会話を笑いに変えて楽しむ若妻も…
小説 『善悪の彼方に』 【第9回】 叶浦 みのり 住宅街にあったお地蔵さんにお参り中話しかけてきた男性は亡くなった友人の父親の知人で今回の火事の通報者!? 少しカーブになっている路地を、住宅五、六軒も進んだだろうか。ふたりは、二股に分かれている場所に行きついた。その二股の道の突き当りの場所に、木造の小屋のような祠(ほこら)がある。祠の扉を開けて中を覗くと、小さなお地蔵様が鎮座していた。「住宅の中に、今時こういうお地蔵さんがあるって珍しいよね」「そうねぇ」真琴も父親の実家の集落のことながら、知らなかった様子だ。「供えてあるお花がまだ新しいよ。お参りす…