次に、肺胸膜をやぶって、内部の肺実質を少しほじくるが、5から10mmくらいの大きさの網目の模様が見える。一つひとつが肺小葉という。
普通、肺の比重は水より軽く、肺の全体または一部を水中に入れると、浮き上がるらしい。これが沈むとすれば何らかの病気があるらしい。あるいは一度も呼吸しない内に死んでしまった子供の肺も水に沈むという。
9594法医学で肺浮揚試験と呼んで利用されているという。肺は左右同じではない。
最初観察したように、人体なら右は三つ、左は二つの部分からなっているが、その境界は裂け目になっていて、肺胸膜はその中まで入り込んでいる。
そのため、各肺葉は独立していて、互いに交通がない。外科で肺の部分切除を行う時は、肺葉の単位で行うらしい。右肺では、上葉と中葉の境界の線、裂け目はほぼ水平だが、それ以外の裂け目はどれも斜めになっている。
それにしても、なぜ右は三つで左は二つなのだろう。その疑問に対する答えはテキストにはなかったので自分で類推するしかなかったが、心臓が左にあるというので、そのぶん小さいのだろうか、と考えたりした。
続いて肺門部(Hilus pulmonis)の観察をする。
気管支、肺動脈、肺静脈がほぼ一まとまりになっている。しかも、右肺では、気管支が肺動脈より上にあるのに、左肺では、下にある。
どんな理由があるのか、その事によってどんな良い事があるのか、考えてみるが、今は全く見当も付かない。心臓からの脈管系の出入りと関係するのだろうか。
気管支と血管は見ただけでは区別がつけにくいが、気管支は軟骨を持っているので、特有の硬さがある。
この気管支は、左右それぞれ右三つ左二つの肺葉に枝を出し、その後さらに枝分かれして区気管支となり、肺は実質的に肺区域と呼ばれる小部分に分かれる。
それは、外科的に切除できる単位として重要である。一つの区域は別の区域と気管支の連絡がなく、動脈の連絡もないからである。
さらに、気管支、肺動脈、肺静脈を肺の実質中に追求する。気管支の枝と肺動脈は伴走する傾向にあるが、静脈は伴わない傾向にある。
世の中には知らない事があるものだ。しかも自分の身体の中に、こんな規則があるとは。