ちょっと変わった不思議な竹取物語

スルガザウルスには予知よち能力のうりょくはありません

風や水を通して人々のいたみや苦しみ悲しみやつらさなどがつたわってきたり今回のように直接目にしたり耳にしたりした時などにみずから動いて人々をすくうことができるのです

そのため富士の御山以外にも登ります

大井川おおいがわを遡って赤石あかいしだけあたりから麓を眺めることもあれば天竜川てんりゅうがわのぼって佐久間さくまの辺りから見下ろすこともあります

また野川のがわを遡って天城山あまぎさんに腰を下ろしたりもするのです

そうして人々の悲しみや苦しみを目や耳にするとけて助けるのです

それぞれ別のザウルスだった頃には小さな一そう小舟こぶねやまとまっているひと家族かぞく程度の人数を助けるのが精一杯せいいっぱいでしたが大きくなった今のスルガザウルスは大きな船も助けられるようになりました

でも最初からうまくできたわけではありません

伊勢いせから相良さがらみなと経由けいゆ田沼たぬまおきつぐ公へのあいさつ)で江戸えどをめざしていた千石せんごくぶね御前崎おまえざきで岩に乗り上げてかじこわしてしまった時には

大きなあみに姿を変えて船をつつ外海がいかいに出ないように引き戻そうと何とか駿河おきまでは頑張がんばりましたが

とうとう外海に出てしまい支えきれなくなって網もやぶれてしまいました

スルガザウルスは「どうかご無事ぶじで!」と心でいのり涙を流しながら船から離れました

この船に乗っていたのが大黒屋光太夫だいこくやこうだゆうで船は八月後にカムチャツカ半島に漂着ひょうちゃく

その後女帝じょていエカテリーナ二世に謁見えっけんゆるされその翌年ロシアのけんにち使節しせつラクスマンと一緒いっしょに日本に十年ぶりに戻りました

この時のできごとを通してスルガザウルスは三つのことが分かりました