ちょっと変わった不思議な竹取物語

これにはまた百年ほどの年月が必要(ひつよう)でした

また そうなった時には 人々の(かな)しみや(くる)しみ (よろこ)びや楽しみも(かん)()ることができ 意思(いし)もしっかりと持つようになりました

スルガザウルスの誕生(たんじょう)です

スルガザウルスが 最初にめざしたのは 自分たちの母の地ともいえるあの富士の御山でした 水となってどこまでも富士川を(さかのぼ)り (だれ)もいない(ひら)けた場所(ばしょ)に出ると (はじ)めて地上(ちじょう)にその姿を(うつ)し 山頂(さんちょう)めざして登っていきました 登ると言っても スルガザウルスには()みしめる足はありませんから 足下(あしもと)の部分に急激(きゅうげき)前回転(ぜんかいてん)水流(すいりゅう)() こし その勢いで登ってゆくのです そのためスルガザウルスの通った後には水の(あと)(おび)のように残ります そう いわばカタツムリが動くように進むのです

山頂に(こし)を下ろしたスルガザウルスは周囲の六つの湖を(なが)め 色々なことを思い出しながら満足そうに(うなず)きました それぞれの古里(ふるさと)とその良い思い出を (ひさ)しぶりに()(かえ)ってみたのです 

御山を登っていく時も 山頂に腰を下ろしている時も (まわ)りの人々がスルガザウルスに気づくことはまずありません 身体も基本(きほん)は水でできており それに灰や煙や塵 藻や海藻(かいそう) (しお)なども多少加わって生まれてたので 姿は()けて周囲の風景(ふうけい)に全く()()んでしまうのです

山頂に長いこと腰掛(こしか)けていても 富士山が少し高くなったようだなどと気づく人はまずいません 太陽(たいよう)の光と角度(かくど)との関係(かんけい)で そこに(にじ)を見たという人は時々いるそうですが

ある時 いつもと同様に 山頂から(ふもと)の方を見下(みお)ろしていると大きな(いくさ)の前なのか 麓の一帯(いったい)家々(いえいえ)が次々と焼かれているのを目にしました

その次の瞬間(しゅんかん)でした